fx 業者 ランキングの問題と解答
しかし一方でファクターを推定するための回帰分析に要する時間や、平均・分散モデル(二次計画問題)を解く手間は増加する。
ファクター・モデルから導かれる二次計画問題を解く巧妙な方法を開発したのが、H氏(H大学教授)であった。
H氏は、一九八〇年代はじめにS大学で博士号を取った後、I社の研究所の特別研究員に迎えられた。
このポストは、博士号を取ったばかりの研究者に与えられるもので、この種のものとしては、全米最高水準の待遇が与えられていた。
H氏は偶然、ここに勤めていたH氏の隣のオフィスに住むことになった。
そしてS氏と同様、この大先生との会話の中で得たヒントをもとに、大規模二次計画問題を効率的に解く方法を開発した。
一九八四年に発表された論文と、それをもとに自ら作成したソフトウェアよって、平均・分散モデルは見事に復活を遂げるとともに、H氏は巨大な富と名声を獲得するのである。
一旦ブレークスルーが起こると、後は一潟千里である。
八〇年代後半には、一〇万銘柄のモデルも解ける時代がやってくる。
大きな問題が解けるようになると、もっと大きな問題を解きたくなるのが研究者の性である。
実際、最近発表された長期資産運用モデルの中には、変数が一〇〇○万に達するものもある。
さすがにこんな大きな平均・分散モデルは簡単には解けない。
このような超大型ポートフォリオ最適化問題を解く方法として、筆者らは一九八〇年代末に、「平均・絶対偏差(MAD)モデル」を提案した。
これはリスクの指標を収益率の分散ではなく、収益率の絶対偏差に入れ替えたもので、これを使えば、超大型ポートフォリオ問題も何とか解けるのである。
H氏が、リスクの概念として分散を用いたことは既に述べた。
しかし、古くから実務家の間では、分散よりも収益率が平均値の下側にどのくらい散らばっているかを表す指標である、「下半分散」を用いる方がより適切ではないか、という意見が出ていた。
収益が目標とする平均値の上側にどのように散らばっていようが、それは(嬉しいだけで)リスクとは感じないはずだ、というのである。
実際H氏も、一九五九年の著書の中で、下半分散がより適切かもしれないと述べている。
しかし、当時既に経済学の版図に組み込まれていたポートフォリオ理論の世界では、このような提案は、実務M先生が、“取引コストゼロの連続時間取引を仮定すると、平均・分散モデル以外のものを考慮する必要はない”、と断定したことによって、下方リスクは死刑宣告を受けてしまった。
ところが、七〇年代に入ると、収益率の正規分布説が大きく揺らぐことになる。
精密な統計分析の結果、株式収益率は正規分布から外れていることが示されたのである。
また、オプションなどのデリバティブが出現するに及んで、収益率対称性は根底から覆されてしまった。
また最近になってR氏らによって、下半標準偏差や(下半)絶対偏差などの下方リスクが、「期待効用最大化原理」という金融経済学の大原則との整合性という点で、平均・分散モデルより優れた性質を持っていることが明らかにされた。
こうして四〇年目にして実務家の直観に軍配が上がったのである。
下方リスクを計算する上で、いま最も良く使われているのが、「VaR(バリュー・アット・リスク)」である。
いま一〇〇億円の価値を持つ資産があったとして、これが三ヵ月後にその価値がどのように分布しているかを計算した結果、「九九%の確率で損失額が三億円を上廻らない」ことが分かったものとしよう。
このとき、「九九%のVaRが三億円である」というのである。
この説明から分かるとおり、これは下方リスクの典型的な例である。
VaRには、バーゼルの国際決済銀行において、マーケットーリスクの計量化に用いられて以来、急速に広まったものである。
そして最近では、信用リスク評価にも採用され、いまや世の中はVaR一色になってしまった観がある。
ところが理論的には、このVaRはやや怪しげなリスク指標なのである。
この理論の根拠になっているのは、収益率が正規分布(またはそれに近いスソの部分の広がりが小さい分布)に従っているという仮定であり、これをはずすと一挙にその根拠が揺らいでしまうのである。
最近特に心配されているのは、L社が蒙ったような、思いもかけない巨大な損失である。
しかしVaRの場合、九九%VaR点の先一%のところにどんな大きな落とし穴が待っていても、それは気にしなくて良いことになる。
これがこの指標の大きな欠陥である。
そこで金融工学者の側からは、より適切なリスク指標として、「下半標準偏差」、「条件つきVaR」などの指標が提案されている。
しかし、世の中ではいまだに、正規分布信仰が根強く、これらの指標が広く採用されるまでには、まだかなりの時間が必要となるだろう。
このところ、インターネットの普及によって、簡単に海外の市場にアクセス出来るようになった。
S助教授は、インターネット取引で、昨年一年に二〇〇万円以上の収益を上げている。
アメリカの朝一〇時は、こちらの夜一一時。
寝る前にひと取引、ネットワークも空いてちょうど具合がよいらしい。
これは、個人投資家に限らない。
低金利、低成長の国内市場での運用難に喘ぐ機関投資家も、海外投資への投資比率を増やしている。
今後規制緩和とともに、一層海外シフトが進むことが予想される。
何しろ、国債の収益率は日米で四%以上も差がついているから、為替リスクや流動性リスクを考えても、海外投資が魅力を増しているからである。
そこで以下では、機関投資家や投資顧問会社が、何百億円ものファンドを国内・国外の資産に分散投資する上で、どのような戦略を用いているかについて説明しよう。
機関投資家の資産運用を扱っている標準的な教科書を開くと、そこには「アセットーアロケーション」技法が紹介されている。
その概略は、性質の異なる資産を何種類かにグループ分けして、それを代表するインデックス(指剛で得られたインデックスを対象とする平均・分散モデルを解き、各資産クラスへの資金配分額を決定する。
つまり、資産はグループごとに異なった性質を持っているので、それぞれ別のファンド‐マネージャーが、独自の知恵を生かして運用するというわけである。
ところがよく考えると、この方法にはいろいろ難しい問題が含まれている。
その第一は、どのように資産をクラス分けするか、また資産クラスを代表する「インデックス」とはそもそも何者か、という疑問である。
資産クラスを代表する個別銘柄だろうか。
確かにそういう場合もある。
しかし普通は、そのクラスの銘柄全体の動きをシミュレートする合成銘柄、例えばTOPIXや日経225インデックス、あるいは信用できる金融機関が作成した「べンチマーク」ポートフォリオなどが使われる。
しかし、例えば日本株という資産クラスを、一つのインデックスで代表させるのでは、情報集約が行き過ぎてしまう。
そこで実際には、産業セクターなどを手掛かりに、国内株式を二〇~六〇程度のグループに分類し、各々に対するインデックスを作る。
債券についても同様な作業を行う。
そして、これらのイソデックスたちを対象とする平均・分散モデルを解き、各サブクラスへの配分比率を決めてやる。
後は、これらを再び適当に再クルーピンクして、何人かのファンド・マネージャーが知恵を働かせて運用する。
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